「ジャズを聴く」I remember Clifford(アイリメンバークリフォード 邦題:クリフォードの思い出) ベニー・ゴルソン作曲(1957年)


 クリフォード・ブラウン(1930年10/30-1956年6/26 満25歳没)。50年代後半のモダンジャズ「ハードバップ」期に活躍した天才トランぺッター。生前のクリフォード・ブラウンは「ブラウニー」というあだ名で皆から親しまれていました。ディジー・ガレスピーに憧れていた大学時代に共演も果たし、演奏スタイルもかなりディジーの影響を感じられます。生活スタイルも、ディジーを見習って酒も麻薬も手を出さない清く慎ましい生活(clean-living)で、その温厚な性格から皆から愛される存在でした。
 50年代前半はライオネル・ハンプトン(Vibraphone)のビッグバンドで活躍します。1950年6月に1度目の自動車事故(演奏後の帰宅途中の事故)で瀕死の重傷を負います。入院中はディジーが見舞いに来ていたというエピソードもあります。1年ほど入院で演奏出来なくなりますが、音楽キャリアを追い続けるようにディジーが説得し復活を果たします。
 復活後、特に名演として知られているのが、1954年2/21、ドラマーのアート・ブレイキーのグループによるブルーノートレコードの名盤「A Night At Birdland バードランドの夜」(Art Blakeyクインテット)Clifford Brown (tp)、Lou Donaldson (as)、Horace Silver (p)、Curly Russell (b)、Art Blakey (ds)です。これはニューヨークのライブハウス「バードランド」のライブ盤で、当日はディジーも聴きに来ていたそうです。
 56年6/26に2度目の事故に巻き込まれます。女性(ナンシー・パウエル)が運転し、その夫(リッチー・パウエル)とブラウンが寝ていました。当日雨の中、ペンシルバニア州のターンパイクでコントロールを失い全員亡くなってしまいます。25歳の若さでこの世を去った天才の死は、当時の多くのミュージシャンに影響を与えました。
 翌年57年に、ライオネル・ハンプトン楽団で一緒だったBenny Golson(ベニー・ゴルソン)が彼の記憶を後世に伝える為に「I remember Clifford(アイリメンバークリフォード 邦題:クリフォードの思い出)」を作曲しました。そして当時、脚光を浴びていたトランぺッター、リー・モーガン(当時19歳)のアルバムに参加する際、この楽曲を演奏するよう促し、結果高い評価を得ました。現在に至るまで、追悼の意を込めて演奏される楽曲です。奇をてらったアレンジはあまり無く、殆んどが正統的な枠組みの中で(ハードバップの文脈の中で)演奏されています。

 

 

Lee Morgan(リー・モーガン) Volume 3(1957年 3月24日録音ニュージャージ)
Lee Morgan(Tp)

Benny Golson (Ts)

Gigi Gryce (As,Fl)

Wynton Kelly (Pf)

Paul Chambers (Ba)

Charlie Persip (Dr)


【多様な録音の紹介】

Benny Golson(ベニー・ゴルソン) Stockholm Sojourn(1964年)
ベニー・ゴルソンが1964年にスゥェーデンで録音した、現代的なビッグバンドアルバム。通常のジャズビッグバンドの編成とは異なり、オーケストラや吹奏楽の楽器も入っており、ピアノレスの編成になっています。管楽器とドラムベースだけの編成の可能性が追求されている。なおゴルソンは、クレジットにあるように指揮のみで吹いていません。

 

Manhattan Trinity(マンハッタン・トリニティ) ミスティー(2004年)
ピアノ:サイラス・チェスナット  ベース:ジョージ・ムラーツ  ドラム:ルイス・ナッシュ
現代を代表する売れっ子ジャズミュージシャンのプロジェクトバンドです。特にこのアレンジではイントロ以外が3拍子のワルツになっている事。そして、ジョージ・ムラーツのクラシックをベースとした安定感のあるベースソロが聴き所です。美しいピアノトリオだと思います。

 

Helen Merrill(ヘレン・メリル) ブラウニー~クリフォード・ブラウンに捧げる(1994年)
1930年生まれの女性ボーカリスト。1954年にデビュー。その際クリフォードブラウンが参加しています。「ヘレン・メリル with クリフォードブラウン」。歌詞(57年)はジョン・ヘンドリックス。冒頭は「鎮魂」というキーワードが思い浮かびます。トランペットはロイ・ハーグローヴ。

 

Donald Byrd & Gigi Gryce(ドナルド・バード&ジジ・グライス)Jazz Lab(1957年3月13日録音ニューヨーク)
ベニー・ゴルソンも参加しているリー・モーガンのアルバムが、オリジナルの録音だと思っている方が多いです(私もその一人でした)。しかし調べてみると、ほぼ同時期、たった11日ではありますが、モーガンより早く録音しているトランぺッターがいました。ドナルド・バード(当時25歳)という人物で、コロンビアレコードから発売された音源があります。

 

Eric Reed Trio(エリック・リード) ブルー・トレイン(2005年)
ピアノ:エリック・リード  ベース:ロン・カーター  ドラム:アル・フォスター 
21世紀のザ・トリオと称される。Manhattan Trinityとは違い、こちらは4拍子のバラードのまま内省的なサウンドで進行します(ただサウンドの傾向はかなり似ています)。最後は原曲のコード進行から少々逸脱(リハーモナイズ)したピアノの変奏で幕を閉じます。同じピアノトリオですが、こちらの方がアタックが強く、和音(コード)の押さえ方が「べたっ」と長い感じです。

 

GRP All-Star Big Band(1992年)
GRPレコードの発足20周年記念として所属ミュージシャンが集結してレコーディングしたビッグバンドアルバム。日本でも大変な売り上げをみせ、急遽日本ツアーも組まれた。このバージョンでは、ハイノートトランぺッターの、アルトゥーロ・サンドヴァルがフィーチャーされ、後半は彼の独壇場になります。

 

JR Monterose(ジャック・モンテローズ) The Message (1959年)
1927-1993 サックス奏者。かなりマニアな存在で、LPレコードなどは販売枚数(流通量)が少ないので、10万円以上の値段で取引される場合もあったようです(JARO盤)。現在は、iTunesで音源が手に入ります。独特の強烈なタンギングが特徴です。テーマ部分では音域的にも押さえていますが、ソロに入ると攻めにいきます。楽曲が生まれたほぼ同年代のサックスの演奏としては、超完成度の高い演奏です。ピアノはトミー・フラナガンです。