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「ジャズを聴く」Take Five(テイクファイブ)ポール・デスモンド作曲1959年

 

デイブ・ブルーベック・カルテットの演奏
PIANO:デイブ・ブルーベック

Alto.SAX:ポール・デスモンド
BASS:ユージン・ライト

DRUMS:ジョー・モレロ

 1959年発表のデイブ・ブルーベックのアルバム『Time Out(タイムアウト)』の3曲目に収録された楽曲。作曲家ダリウス・ミヨーにも師事した事のあるブルーベックにはクラシックの基礎が有り、かつ欧州ツアー時に見たトルコ、ブルガリアの民俗音楽から影響を受け、『変拍子ジャズ』というコンセプトで作られたアルバムです。1曲目の「トルコ風ブルー・ロンド(作曲デイブ・ブルーベック)」は9/8拍子で出来ています。「Take Five」はサックス奏者のポール・デスモンド作曲で、「五拍子で」「五音音階で」の意。

 変拍子の多くは「混合拍子」と呼ばれるもので、単純な拍子=単純拍子(2か3)を複数組み合わせて作られます。例えば先程の9/8拍子=9拍子であれば、2+2+2+3の様に構成されます。Take Fiveの五拍子も混合拍子で3+2拍子で考えられます。ブルーベックとその仲間による音楽的実験(クラシック、民俗音楽+ジャズ)の結果生まれたサウンドであると考えられます。

 


『五分間休憩』説
この曲の「Five=5」には、5分の休憩から来ているという説も有りますが、これは1961年にブルーベックの奥さんであるアイオラ・ブルーベックが以下の歌詞をつけ、カーメン・マクレエのボーカルで録音された事から生じている誤解と思われます。

 


Won’t you stop and take a little time out with me?

ちょっと立ち止まってみない?
Just take five

5分でいいからさ
Stop your busy day and take the time out to see

忙しい毎日をやめて
I’m alive

僕を見つめ直してくれよ


【多様な録音の紹介】

「Time Out」デイブ・ブルーベックカルテット(1959年7/1)
Dave Brubeck(Pf)

Paul Desmond (As)

Eugene Wright (B)

Joe Morello (Dr)
録音:Columbia 30th Street Studio, New York
 コロンビア30番街スタジオは通称「チャーチ=教会」と呼ばれ、非常に天井が高く、独特の残響(リバーヴ、Reverb)を生み出しました。イントロやAメロ部分のフレーズも、心地よい残響がかかっています。現在は「デジタルリバーヴ」と呼ばれるもので加工しますが、ナチュラルな残響はなんとも温かみがあります。このスタジオでは同じ年にマイルス・デイビスのモードジャズ作品「Kind of Blue」が3/2,4/22に録音されています。なるほど音質的にはダークな空間的な響きが似ていますね。

 


「Step Forward」New York Ska-Jazz Ensemble(2008年)※四拍子
Rocksteady Freddie, saxophone, lead vox    

Ric Becker, trombone, vox
Alberto Tarin, guitar, vox

Earl Appleton, keys
Wayne Batchelor, bass

Yao Dinizulu, drums

 原曲の「変拍子」のコンセプトを逸脱して、4/4拍子、しかも「レゲエ」のスローでノリの良い雰囲気で演奏された異色バージョンです。レゲエの特徴は、エレキギターの裏打ち(2,4拍目)と歌う様なベースラインがポイントで、そのテンポを上げて行くと「スカ=Ska」という音楽になります。5拍子のメロディを「休符」で4拍子にしています。やや強引では有りますが(笑)。原曲ではソロ部分はBセクションに行きませんが、このバージョンではBを挟みます。サックスの音色は荒々しく(悪そうな感じ)、原曲の「クールな感じ」はもはやありません。

 

 

「ITACURUCA」Pamela Driggs(2002年)※六拍子
 ブラジリアン・ヴォーカリスト、パメラ・ドリッグス。こんどは6/4拍子です。6拍子は、3+3で取ると「3拍子系」ですが、このバージョンは4+2でとっています。4拍子が内包されるので、変拍子ながら非常にノリのよいサウンドです。全体的にモダンなブラジリアンポップな雰囲気(アコギ+シンセ)です。

 

 

「Sachal Jazz」Sachal Studios Orchestra(2010年)※五拍子エスニックジャズ
 パキスタン、ラホールという街にスタジオを構える音楽制作会社「サッチャルミュージック」の異色作品。約40人ほどの編成で西洋楽器以外に、インドの民族楽器シタールやタブラなども取り入れた民族色の強いサウンドです。ストリングス(弦楽器)セクションは、ロンドンシンフォニーオーケストラのメンバーが参加しています。生前のデイブ・ブルーベック(1920-2012)が「最も面白いアレンジ!!」とコメントしたことでも知られているバージョンです。このアルバムのミキシングとマスタリングは、ビートルズの本拠地としても知られるロンドンの「アビーロードスタジオ(Abbey Road Studios)」で行われています。5/4拍子ですが、サウンドが超創造的です。

 

 

「Light My Fire」Eliane Elias(2011年)※五拍子+10拍子ボサノバ
 イリアーヌ・イリアスはブラジル出身のピアニスト・ボーカリスト。アコースティックで優しい、脱力系のサウンドです。基本は五拍子ですが、途中で入る幻想的な部分は、4+2+4拍子になっており原曲の「変拍子」のコンセプトは継承しています。トランペットは元夫のランディ・ブレッカーがハーマンミュートで吹いています。何ともリラックスしたサウンドが心地よいバージョンではないでしょうか。

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