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「ジャズを聴く」Nica’s Dream ホレス・シルバー作曲 1956年

【Nica様】

 

本名は

 

パノニカ・ドゥ・コーニグスウォーター(Pannonica de Koenigswarter)。

正確には Baroness(男爵夫人) Kathleen Annie Pannonica de Koenigswarter

 

 1913年12月10日、イギリスの財閥ロスチャイルド家の一族、パノニカ・ロスチャイルドとしてロンドンに生まれました。31年にドイツのミュンヘンでアートを学びます。イギリスに戻ると、社交界を嫌い自由を求めてパイロットを目指し、その訓練中に夫となるフランス人ジェール男爵(Baron Jules de Koenigswarter)と出会い、二人は結婚します。夫は第二次大戦後外交官となり南米メキシコに転勤となり夫婦で赴任します。

 ニカは大使婦人がいやで、51年に別居するのですが、そのきっかけとなったのが「ラジオから流れるジャズ」だったようです。同年ニューヨークのアパート(995 fifth Ave.)に移住します。5人の子どもたちは置き去りだったそうで、ジェールとは56年に正式に離婚します。

 そして当時のNYのモダンジャズ「ビ・バップ(BeBop)」のミュージシャンらのパトロンとなりました。特にチャーリー・パーカーやセロニアス・モンクをサポートしていたことは有名で、Bebop Baroness(ビバップ男爵夫人)と呼ばれていたという逸話が残っています。

 

 ニカに捧げられたモダン・ジャズの楽曲は多数あり、Pannonica(セロニアス・モンク)、Tonica(ケニー・ドーハム)、Blues for Nica(ケニー・ドリュー)、Thelonica(トミー・フラナガン)、Nica(ソニー・クラーク)などが例として挙げられますが、中でも有名なのは今回ご紹介する、ピアニスト、ホレス・シルバー作曲の【Nica’s Dream】でしょう。ハード・バップが流行していた1956年のニューヨークでニカに捧げ作曲されたハード・バップを代表する楽曲です。

 

【Love and Peace: A Tribute to Horace Silver 1995年】

 

 3度のグラミー賞を得ているアメリカ人女性ボーカリスト、ディー・ディー・ブリッジウォーター。ホレス・シルバーとも共演歴のあった彼女が、95年に発表したホレス・シルバーへのトリビュートアルバム。ホレス・シルバーも2曲("Nica's Dream”と "Song for My father ")参加すると共に作詞もしているのですが、これがとても良い。(田丸訳)

 

 

(A)

この歌は最高にご機嫌

音楽家のすべてが

演奏するように

そうなるように願っているの

誰もがニカの夢を愛して欲しいわ

 

この歌は愛と共に生み出された

天使によってもたらされた素敵なメロディーなの

そうなるように願っているの

誰もがニカの夢を愛して欲しいわ

 

(B)

彼女には目的があった

いつの日にかジャズという音楽が

音楽芸術(モダンアート)として認められる事を

そんな未来を

あなたも思うでしょ?

互いに助け合い

彼女の目的が実現されるまで

そして全人類が

祝福されるまで

 

(A)

この歌は永遠に残るだろう

その日が来るのをしっかり見届けよう

人々がこの歌を

ジャズの歴史の1ページにする事を

そうなるように願っているの

誰もがニカの夢を愛して欲しいわ

 

【KENNY BURRELL「K.B. BLUES」1957年録音】

 

Kenny Burrell (Gt)

Hank Mobley (Ts)

Horace Silver (P)

Doug Watkins (B)

Louis Hayes (dr)

 

ハードバップの王道サウンド。終始ブルースフィーリングに溢れる重厚な雰囲気。録音(ルディ・ヴァンゲルダー=ブルーノートレコードなどのエンジニア)も素晴らしい。ここでのホレス・シルバーはインサイド気味で控えめなソロを展開します。

 

【Joe Sample「Invitation」1993年】

 

原曲の美しくミステリアスな雰囲気を拡大解釈し、シンセサウンドでまとめたスムースサウンドです。都会的な現代フュージョンサウンド。

 

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