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「ジャズを聴く」Stella by Starlight(邦題:星影のステラ) ビクター・ヤング作曲 1944年

【サウンドトラックからポップミュージックへ】
 映画「The Uninvited『呪いの家』1944年(パラマウント映画)」の劇中背景音楽。元々は主題歌というよりは、映画の中程で現れるライト・モチーフ(Stella Meredith(後述)のテーマ)でした。ライト・モチーフとは、例えば「スター・ウォーズ」ならばダース・ベーダーが出てくる時に、必ずと言って良いほど流れる旋律的主題がありますが、あのような共通主題の事を示します。(注)「酒とバラの日々」の回でも詳しく解説しています。


※参考  The Uninvited(1944)

(開始から40分ほどでテーマが出てきます)

 

 『呪いの家』のジャンルは「ホラー・ラブストーリー(そんなのあるんだ!)」。美女(Stella Meredith)を死の世界へ引きずり込もうとする悪霊、彼女の守護霊、そして彼女を愛する作曲家の戦いを描いたもので日本でも1946年に公開されました。
 1946年にビクター・ヤング・オーケストラが軽音楽(イージー・リスニング)のレコードを出し、翌年ネッド・ワシントンによって作詞されたボーカルバージョンがフランク・シナトラによって歌われ、大ヒットとなりました。映画の中で”Stella by Starlight”という台詞が出てくる事からタイトルが付けられ、背景音楽である枠を超えて、大変美しい楽曲だった為にこうしたリメイクが行われたのでしょう。ちなみに、ビクター・ヤングは他に「80日間世界一周のテーマ 『Around The World』」などの多数の映画音楽を手がけています。

【多様な録音の紹介】

Miles Davis「My Funny Valentine: In Concert」(1965年)

 1964年2月12日にニューヨークリンカーンセンターで行われたライブ盤。
Miles Davis(Tp)   George Coleman(Ts)   Herbie Hancock(Pf)   Ron Carter(B)  Tony Williams(Dr)

 マイルスは60年代後半に電気楽器の方向に行ってしまうのですが(そこにはベティ・メイブリーという若い女性との結婚も絡んでいるのですが、、、)、ライブが行われた64年のこの時期は間違いなくマイルス最高潮の時期で(あくまでもモダン・ジャズの語法の中での意)、音色、リズムのアイデアなど変幻自在のサウンドになっています。ライブ版という事もあり非常にテンション感が感じられます。マイルスはエレクトリックな方向に行く前は、このアルバムのジャケットの様なスーツ(メーカーはブルックス・ブラザーズ)を愛用していました。若いベティ・メイブリーとの出会いで、音楽もファッションもガラリと変わって行きます。もっともそれはマイルスだけでなく、アメリカの60年代はまさに変革の時代だったのです。

Ron Carter「Dear Miles」(2007年)
 上記のマイルスバンドで活躍したジャズ・ベーシスト「ロン・カーター」のマイルスへのトリビュートアルバム(ブルーノートレコード)です。最初から最後までベースソロで弾き倒しています。「星のきらめき」を表現しているのか、金属系の打楽器が素敵な雰囲気です。

日野皓正クインテット「Live!」(1973年録音LPレコードレア盤)
 日本の70年代のジャズレーベルTBM(Three Blind Mice=スリー・ブラインド・マイス)のライブ版。上記のマイルスの作品の手法を、より拡大解釈し現代音楽の様なフリージャズ的即興演奏を中心に展開されています。TBMのレコードはどれも音質が良いです。「どこがステラ?」と言われると困るのですが(笑)、、、メロディーの断片をギリギリ使っていると考えられます。Youtubeにはありません。

 

Terumasa Hino(Tp) 

Mikio Masuda(Pf) 

Yoshio Ikeda(B) 

Hino Motohiko(Dr) 

Yuji Imamura(Per)

Michel Camilo & Tomatito「SPAIN AGAIN」(2006年)
 ジャズピアノとフラメンコギターの名手によるデュオ。前作『SPAIN』の続編です。ミシェル・カミロの美しいハーモニーと情熱的なトマティートが絶妙なコントラストを醸し出しています。

Miles Davis「1958Miles」(1958年録音79年発売LPレコード)
 マイルスがモード奏法(コードよりもシンプルな音階『旋法』を重視したアドリブ手法)を模索し始めた時期のアルバムで、名盤「Kind Of Blue」と同じメンバーで録音された作品です。長らくお蔵入りで発売は79年になります。コルトレーンのテナーソロが特に素晴らしい。
Miles Davis(Tp)   John Coltrane(Ts)    Julian “Cannonball” Adderley(As)
Bill Evans(Pf)           Paul Chambers(B)      Jimmy Cobb(Dr)

Kenny Dorham「Kenny Dorham Memorial Album」(1960年)
Kenny Dorham(Tp)  Charles Davis(BariS)  Tommy Flanagan(Pf) 
Butch Warren(B)     Buddy  Enlow(Dr)
 上のマイルスの作品からの影響が感じられる演奏です。前半はスローテンポでハーマンミュートの音色で吹いていますが、後半意外な方向へ。同時代の演奏でハード・バップと呼ばれるスタイルで演奏されています。

Oscar Peterson「Blues Etude」(1965年録音LPレコード)
Oscar Peterson(Pf)  Ray Brown(B)  Louis Hayes(Dr)
 オスカー・ピーターソンの転がる様なピアノとレイ・ブラウンのシンプルながらもグルーブ感のあるベースラインが絶妙なコントラストの作品です。音質も素晴らしい。タイトルの通りスタンダード曲の「ブルース」的な解釈で演奏されています。Youtubeには無いようです。

※この記事は、東海大学地域連携センター主催『ジャズを聴く』講座で使用したものを、WEB用にアレンジしたものです。田丸智也