「ジャズを聴く」The Shadow of Your Smile(「いそしぎ」のテーマ) ジョニー・マンデル作曲(1965年)

 

【映画「いそしぎ(The Sandpiper)」】
    1965年6月公開のアメリカ映画。監督:ヴィンセント・ミネリ 主演:エリザベス・テイラー、リチャード・バートン。映画自体は『昼のメロドラマのようだ(soap opera)』と酷評されたが(※注 当時アメリカの昼ドラのスポンサーが石鹸会社だった事に由来)、主題歌である「The Shadow of Your Smile」は第38回(1966年4月)アカデミー賞歌曲賞を受賞しました。本来は『いそしぎ=sandpiper』なのですが、日本ではこの楽曲の印象が強いため、『いそしぎ=The Shadow of Your Smile』となっています。ジャズのジャムセッションなどでも「いそしぎ」で通じます。

 ちなみに同年のアカデミー賞は、作品賞、監督賞、編曲賞、録音賞、編集賞をミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック(1965年3月公開)」が総なめ。興行収入を比べてみると、、、、

 

いそしぎ:

$14,000,000
サウンド・オブ・ミュージック:

$158,671,368


【歌詞 作詞:ポール・フランシス・ウェブスター(Paul Francis Webster)】

 

The shadow of your smile

When you have gone
Will color all my dreams

And light the dawn
Look into my eyes my love and see

All the lovely things you are to me

Our wistful little star

It was far, too high
A teardrop kissed your lips

And so did I

Now when I remember spring

All the joys that love can bring
I will be remembering

The shadow of your smile


あなたが去ってしまった今、その微笑みが私の夢に色彩を与え、夜明けをもたらす。


私の目を見つめて どれほど愛おしいかわかるでしょう。

私たちの小さな星は、遥か宇宙の彼方、涙があなたの唇に落ちた時、私もあなたに触れてみた。

今、春を思い出せば、愛に満ちたすべての喜びや、あなたの微笑みを、いつまでも覚えている。


【作曲者 ジョニー・マンデル(Johnny Mandel)】
 マンハッタン音楽院とジュリアードで音楽を学ぶ。トランペット、トロンボーンを演奏するマルチブラスプレーヤであり、作曲家編曲家としても活躍します。カウント・ベイシー楽団で活躍後、映画音楽の作曲に携わり、1958年には「I Want to Live!」でグラミー賞にノミネートされました。


その他の代表曲
Close Enough for Love

Emily

A Time for Love

など

 


【多様な録音の紹介】

The Oscar Peterson Trio & The Singers Unlimited「In Tune」1971年録音
シンガーズアンリミテッドは4パートからなるボーカルグループで、伴奏にピアニスト、オスカーピーターソンのトリオが参加しています。典型的なバラード伴奏(ドラム→ブラシ奏法、ベース→コードの主音をシンプルに弾く、ピアノ→コード伴奏とリフ、ソロ)の上でエモーショナルなコーラスが素敵な雰囲気です。

The Oscar Peterson Trio
  Oscar Peterson(Pf)Jiri Mraz(B) Louis Hayes(Dr)


The Singers Unlimited
  Bonnie Herman、Don Shelton、Gene Puerling、Len Dresslar

 

Eddie Harris「The in Sound」1965年録音
サックス奏者、エディ・ハリス(1934-1996)のバージョン。ファンキージャズと呼ばれるスタイルで、ブルース的な雰囲気が特徴です。原曲が緩やかな曲調なのでバラードやボッサのスタイルで演奏される事が多いですが、ここではスゥィングで演奏されています。
Eddie Harris (Ts)Cedar Walton(Pf)Ron Carter(B)Billy Higgins(Dr)

 

Jack McDuff「Tobacco Road」1966年録音
このバージョンもファンキージャズの雰囲気ですが、エレクトリック楽器(ハモンドオルガン、エレキギター)を使用したサウンドです。右側から聴こえるメロディの音色は一見エレクトリックピアノのようですが、ハモンドオルガンでボリュームペダルを操作して減衰させているようです。ベース音はオルガン奏者が左手で弾いています。
Jack McDuff (organ, arr)、Danny Turner(flute)、Calvin Green(Gt)、Joe Dukes(Dr)

 

Dexter Gordon&Slide Hampton「A Day In Copenhagen」1969年録音LP
テナー奏者デクスター・ゴードン(1923-1990)のバラード。デンマークのコペンハーゲンで録音されたアルバム。終始内省的なサウンド。残念ながらトロンボーンのスライド・ハンプトンはこの曲は参加していません。1968年にハンス・ゲオルグ・ブルナー=シュワーによって設立されたドイツの名門レーベルMPS(Musik Produktion Schwarzwald)のレア版ですが、現在はデジタル化され流通しています。音質が大変素晴らしい欧州レコーディングです。日本人でも白木秀雄氏、山下洋輔氏が録音を残した名門です。
デクスター・ゴードン(Ts)ケニー・ドリュー(Pf)ペデルセン(B)アート・テイラー(Dr)

 

Herb Ellis&Joe Pass「JAZZ/CONCORD」1973年録音LP
左チャンネル ハーブ・エリス(1921-2010)
右チャンネル ジョー・パス(1929-1994)
2人のギターの巨匠によるアルバム。1971年に2人は意気投合しそれ以降、同じ楽器でありながら共に演奏する機会が多くなります。「いそしぎ」はアルバムでは小粋なブルースの前に配置されています。折角ですのでThe Shadow of Your SmileとGood News Bluesを続けて聴きましょう。
ハーブ・エリス(Gt)ジョー・パス(Gt)レイ・ブラウン(B)ジェイク・ハナ(Dr)

 

宮沢昭「On Green Dolphin Street」1982年録音デジタル録音LP
松本英彦氏とならぶ日本のテナーの重鎮。1927年長野県松本生まれ。2000年死去。日本のジャズ黎明期を切り開いた人物で穐吉敏子らと共演していました。70年代は歌謡バンドのバック(越路吹雪など)で一度ジャズを離れますが、本作はジャズ復帰後のレア盤です。宮沢氏を支えるリズムセクションも強力です。80年代に多く見られたでデジタル録音アナログマスタリング(LP化)で音質もクリアーです。
宮沢昭(Ts)佐藤允彦(PF)井野信義(B)日野元彦(Dr)

油井正一先生の言葉
「松本英彦が常に陽のあたる大道を闊歩してきたのに、宮沢が選んだのは常に裏街道」

 

渡辺貞夫「ナベサダ・アンド・チャーリー」1967年録音LP
日本アルト界の重鎮渡辺貞夫氏がバークリー音大時代の恩師であるサックス奏者のチャーリー・マリアーノ(1923-2009)と吹き込んだアルバムです。チャーリー・マリアーノは穐吉敏子の最初の夫でもあります(娘がボーカリストのマンディ満ちる)。「いそしぎ」ではなんとナベサダさんは全く吹かない(!)で完全に恩師をフィーチャーしています。
渡辺貞夫(As,Fl)チャーリー・マリアーノ(As)菊池雅章(Pf)原田政長(B)富樫雅彦(Dr)

 

Philippe Baden Powell Trio「ESTRADA DE TERRA DIRT ROAD」2013年録音
ブラジルリオ出身のギターの名手バーデン・パウエル(Baden Powell 1937-2000)の長男フィリップ・バーデン・パウエル。この講座ではおなじみの『リハーモナイズ作品(ハーモニーを作り替える手法)』です。現代的なポップな響きとブラジル音楽によく見られる変拍子を組み合わせた独特のサウンドです。

 

D Train「The Shadow of Your Smile / Keep Giving Me Love」1983年録音
80年代R&Bやポップの語法でカバーした異色バージョン。80年代らしいサウンドの特徴として

(1)カチカチのドラム→ドラムマシンという機械で演奏している。
(2)シンセベース→ビョンビョンいうシンセサイザーのベース
(3)裏拍(2拍目)に手拍子のサンプル(音源)が入る
ジャズ的な要素としては、ボーカルのフェイク(崩して歌う)やスキャット(無意味音節によるソロ)、シンセリードによるソロ、などが挙げられます。こうした解釈もアリでは無いでしょうか?